『重力ピエロ』
伊坂幸太郎著の『重力ピエロ』を読んだ。
前に読んだ『ラッシュライフ』も不思議な小説だったが、こちらもそれに負けず劣らず変な小説である。主人公の弟「春」と「DNA」を軸にした(この小説風に言えば二重螺旋構造の)物語。
以下ネタばれを含むため、まだ読んでない方はご注意ください。
過去と現代が行ったり来たりするのだが、それが主人公家族の人物像を深く掘り下げる結果につながり、感情移入を誘う。特に弟「春」はその生い立ちからして強い感情移入を呼び起こす。それ故に、それ故に、あのラストはあれで良かったのだろうか、と考えざるを得ない。あれでは犯罪を容認しているようにも受け取れる。もちろん著者はそういった意見が出ることを見越した上で書いているだろう。しかし、彼が、彼だからこそ本来の道を進ませるべきではなかったかという思いが強い。その上で、刑を終えた彼を夏子さんが待っている、なんてストーリも悪くは無かったのではないかという気がしないでもない。
それはそうと、著者の作品の舞台は上記2冊とも仙台である。一時期仙台に住んでいたことがあるやっくんとしては、それだけで入り込んでしまうところがある(と言っても10年も前の話なので、地理関係は既に希薄なのだが)。昔読んだ『凍える牙』(乃南アサ)も、実家近くの描写が出てくることもあり、強く引き込まれた記憶がある。やはり、知っている場所が舞台になるとイメージが浮かぶので、内容に入りやすいのだろう。もちろん、読書は想像すること自体が楽しいので、現実が入ってくるのもどうかとは思う。が、生きた背景を想像の主人公たちが動く姿は映画的で、かつ感動的ですらある。全ての小説がそうなってしまえばその感動も薄れてしまうのだろうが、たまにはそんな感動を味わうのも悪くない。そんなことを感じさせてくれた小説であった。内容としては十分面白い、が、ラストに疑問を感じてしまったので、星4つ。
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